THE TREE OF LIFE ~生命の木~

世界日記 (本編)


   
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小さな巨人・・・。日本語を使用した文法上の表現として、この形容詞と名詞の組み合わせは適切ではない。しかし、凄まじい能力を内に秘めた小柄な体格の偉人を称える時、これ以上適切な言葉はなくなる。僕は、その小さな巨人に会った事がある・・・。

漫画「巨人の星」では、オズマが星飛雄馬の事を「リトル・ジャイアント小さな巨人)」と称賛した。また「ドカベン」でも、エース里中投手が自らを「小さな巨人」と口にしている。彼らの共通点は、小柄な体格をした男性であるという事、スポーツ選手であるという事、そしてどんな障害をも退ける強靭な肉体と精神を併せ持っていたという事だ。彼らは日本の子供達に勇気と希望を与え、同時に野球界の繁栄にも一役買った。だが、飛雄馬や里中がフィクションという最大の武器を以ってしても太刀打ちできない相手が存在する。実在の英雄は、厳しい顔つきで氷上に姿を現した・・・。

清水宏保、北海道が生んだ日本を代表するスピードスケート短距離界の第一人者である。
幼稚園の時にスケートを始めた彼も、今月27日には32回目の誕生日を迎える。
2006年2月13日月曜日、その彼はトリノ・オリンピックという最高の舞台で、31歳最後の
スタートラインに立った。僕はその姿を、観客席から静かに見守っていた・・・。

清水選手1

↑レース前の清水選手の様子

1998年長野オリンピック、僕の青春時代に、彼は最も輝く色のメダルを首に下げた。その年から、世界距離別選手権500メートルで4連覇を達成。2002年のソルトレーク・オリンピックでは、同競技で銀メダルを獲得した。当時、清水選手に密着したテレビのドキュメンタリー番組を見た時、無酸素運動という壮絶なトレーニングを鬼の形相でこなす彼の姿が放送された。特別スケートに興味がなかった僕の目にもその光景は力強く映り、少なからず前を向いて必死に努力する事の重要さとその難しさを学んだ。そして2006年、年齢を重ねるに連れて衰えていく肉体、彼はその限界をも乗り越えオリンピックの出場権を手に入れたのだ。全盛期のような滑りはもうできるはずがない。「でも、でも清水ならっ!!」そう願う多くのスケートファンがオーヴァル・リンゴットに詰め掛けていた。僕もその内の一人であった事は言うまでもない・・・。

レースはあっと言う間に終わった。金メダル、銀メダル、銅メダルを獲得した三選手がそれぞれ表彰台に立った時、そこにかつての世界記録保持者・清水宏保の姿はなかった。日本人であれば、誰もがその光景を見て残念に思う事だろう。日本勢は及川選手の四位が最高で、メダルを獲得するには至らなかった。18位という残念な結果、メダルどころかトップ10に入る事すらできなかった無念、清水選手は静かにクールダウンをおこなった後、寂しそうにリンクから姿を消した・・・。

その後、観客がほとんどいなくなった会場内をカメラ片手にウロついていた僕は、偶然関係者用通路に入ってしまった。清水選手と直接言葉を交わす事ができたのは、そこで取材に応じていた彼が僕に気付き「応援していただいたのに、スイマセンでした」と声をかけてきてくれたからだ。僕はミーハーとしてのキャリアは長い。有名人に会う事が大好きで、今までも多くの著名人の方々と言葉を交わした経験がある。まして僕は関西人、相手から笑いの一つでも引き出せるだけの自信があった。だから彼と対面した時、言葉が詰まってしまった自分に驚いた。何と言ったら良いのかが全く浮かんでこなかったからだ・・・。「いえ、素晴らしい滑りでした!」と言うのは逆に失礼だと思ったし、寂しそうな表情を浮かべる競技後のアスリートに対し「残念でしたね」と言う訳にもいかなかった。「次、頑張ってください!」とエールを送ろうにも、彼の年齢を考えたらその言葉も口から出てはこなかった。だからといって、「お疲れ様でした」の一言はあまりに寂しすぎた。結局僕は、「いつも応援してますから」とだけ伝えたのだった。

清水選手2

↑快く記念撮影に応じてくれた清水選手だったが、やはり表情は最後まで晴れなかった・・・

小さな巨人・・・。日本語を使用した文法上の表現として、この形容詞と名詞の組み合わせは適切ではない。しかし、凄まじい能力を内に秘めた小柄な体格の偉人を称える時、これ以上適切な言葉はなくなる。「じゃあ、レース後の調整(トレーニング)があるんで」、そう言ってその場を後にした清水選手・・・。身長162センチという小柄な体格をしたスピードスケートのアスリート、彼はどんな障害をも退ける強靭な肉体と精神だけではなく、何よりも努力を惜しまない姿勢を持っていた。
僕はイタリアのトリノという街で、小さな巨人に出会った。

オリンピック

↑オリンピックには、実に様々なドラマがあった・・・

2006年2月13日の思い出
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